黒くて四角い雪子さんの家。その右側に低い斜めの屋根がくっついている。それが私の「無為庵」だ。

雪娘を作って無為庵の窓の下に飾る頃、木々に積もった雪はだいぶ溶けていた。雪の命も儚い。

最初の写真は、朝日が昇ってきた頃、７時過ぎ。

それから、コーヒーを飲んだり、ホットケーキを焼いて食べたり、雪見酒に招待されたり、散歩したり、雪娘を作ったりして・・・３時間ほどが経った。

小鳥の家の、屋根の右側の雪だけがすっかり解けている。太陽が当たった南側だけ。太陽の力って凄い。

お向かいの先生が、「良かったら雪見酒をご一緒に」と言ってくださる。「はい、もちろん、喜んで！」とお邪魔する。

広いベランダからの素晴らしい展望。初めて飲む発泡日本酒と、初めて食べる白魚の塩辛。雪が降ると何もかも楽しくなる。

雪を被ると、もっと綺麗に見える。蝋梅、椿、夏みかん、まゆみ、菜の花、笹。

　　

　　

朝起きると、あっ、ゆうべのうちに雪が降ったんだ！　ベランダからのいつもの景色が、まったく違う！滞在中に雪を見たいという願いが叶った。

長柄町のこの辺（権現山）では毎年１回か２回、雪が降る。でも回数も深さも以前よりは少なくなっているようだ。

２０年以上も前のこと。私はオーストラリアから、朝ちゃんはアメリカから母の家に来ていた。

母の浴衣姿を見て朝ちゃんが、「それ、私に頂戴！」と言った。母は朝ちゃんに浴衣を着せて、「似合ってるよ！」と言って喜び、私は写真を撮った。あとで私はその写真をデッサンの練習に使った。似ていないけど懐かしい。

今日の夕焼けは殊更に綺麗だった。晴れて風が強くて気温が低かったからかもしれない。

太陽を見送りながら思った。好きだった人たちは皆んな、あの西の空の向こうにいるのかしら・・・。

母が亡くなって１５年が経った。「お母さん灯籠（お墓のつもり）」にお線香と花を載せて、妹と一緒に手を合わせる。

　　

部屋に入る時にふっと香り、机に座る時もういちど香る。