冬祭り

On 2011/06/25, in 学校, by evermidori
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冬至の三日後。いちど家に帰った生徒達は、5時過ぎに父兄と一緒にまた学校にやって来た。暖かい服を着て毛糸の帽子をかぶって皆なんだか嬉しそうだ。鐘を合図に、生徒と教師と父母達はクラスごとに肩を寄せ合うようにして芝生の運動場に集まった。

真ん中に据えられた大きな提灯の灯りを背景に、アボリジニの踊りが始まる。ディジリドゥーの力強い演奏が波のうねりのように大地に広がり、かけ声のような言葉が空に響き渡る・・・・素朴な踊りを見ながら、この空もこの大地も太古の昔からずっとここにあったのだということを思う。高校生の「母なる大地」の合唱も綺麗だった。大地の中に命とエネルギーが蓄えられる冬。

生徒達自作のそれぞれの提灯に火が灯ると、華やいだ暖かい雰囲気が醸し出される。それでも誰もがお喋りを慎んでいる。静寂と寒さと闇と灯りの魔法。良く見えないから目を凝らす。耳を澄ます。闇の中で自分の灯りを抱いて、孤立感と連帯感を同時に感じる。田舎の闇は、その質も量も半端じゃないから素敵だ。

 

嬉しい発見

On 2011/06/20, in その他, by evermidori
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今日も、マウント・ロフティー植物園を散歩した。マンゴスチンにそっくりな形の実がいくつも落ちている。何だろうと思って見上げると、椿だった。椿の実だったのか!その辺りにはいろいろな種類の大きな椿の木が数十本もあって、まだ蕾は固いけど、一斉に咲いたら綺麗だろうな・・・。

良い香りがするので驚いて立ち止まって、香りの方へ向かってキョロキョロ探すと・・・蝋梅だった。

山の中腹から谷間の池まで100ヘクタールの広さがあり、登ったり下ったりの脇道が無数にあって飽きない。何よりも静かなのが良い。毎週来ても良さそうだ、と、今頃になって急に魅力を感じるのは何故か。答えは、「一人で歩いたから」だ。友達とお喋りしながらでは見えなかったものが、一人だと見えるのだ。映画は一人に限るけど、散歩もそうかもしれない。少なくとも、一人の散歩も良いものだ。椿の実よりも蝋梅よりも、それが今日の嬉しい発見だった。


 

初冬

On 2011/06/14, in その他, by evermidori
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暖かいジャケットを着て、毛糸の帽子をかぶって、ウォーキングシューズを履いて、車で僅か20分。丘陵地帯にある「マウント・ロフティー植物公園」で静かな散歩を楽しむ。葉っぱはもうほとんど落ちてしまって、冬空に細い枝が幾重にも重なり広がっている、その様々な線が綺麗だ。

枝の先に赤い実が残っている。だいぶ萎んでしまって、やがて朽ち落ちようという時に、何という赤さだろう。小さな芽が用意されているというのに、急ぐでも惜しむでもなく、ありのままに何と美しい姿だろう。

たった一輪の、気の早い菫に出逢った。芭蕉の俳句みたいだと一人で笑う。立壷菫、源氏菫、壷菫、茜菫、叡山菫、雛菫・・・Mさんに菫の名前を幾つか教わったけれど、さて、どれだろう?葉の形は?茎は?・・・・「名前は私も知らないの。私は私よ。」と、小さい紫が言った。

 

朝市

On 2011/06/12, in 食べ物, by evermidori
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セントラル・マーケットの次に楽しいのは、あちこちで週末に開かれる朝市だ。この地域の生産者たちが、自分の作った物に愛情とプライドと充分な知識を持って売っているから、会話が楽しい。「この林檎は珍しいわね。」「レモンの味がするよ。食べてみて。」「この瓜はどうやって食べるの?」「30分まるごと茹でて・・・」「農薬は使ってないわよね」「ブロッコリの葉っぱも食べるのなら、こっちのほうが柔らかくていいよ」etc. 野菜や果物だけでなく、チーズやチョコレートや卵やお菓子やパンやソーセージなども売っている。やはり2時間位があっという間に経ってしまう。

今日のハイライトは、今シーズン絞りたてのオリーブ油。食べ比べてみるとどれも美味しいけれど、青臭さの度合いと色が少しずつ違う。プンと口から鼻に抜ける青さが強いのが好きだ。これは好きな人と嫌いな人とに別れるようだけど。ずっしりしっとりしたサワードウのパンをちぎって浸して食べると、オリーブ・グリーンの色も綺麗。

 

干し柿

On 2011/06/11, in 食べ物, by evermidori
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「今は渋くて食べられないから、ゼリーのように柔らかく甘くなるまで待ってスプーンで食べてね」と言ってお客さんに頂いた10個の渋柿。いろいろなドライフルーツがあるのにオーストラリア人は干し柿を知らないみたい。雨の当たらない所にぶら下げて(ほとんど忘れていて)ちょうど一ヶ月。やったあ!素晴しい甘さの干し柿が出来ている。自分で干し柿を作ったのは生まれて初めて。こんなことでも母を思い出してしんみりしてしまう・・・。



 

忙中閑あり

On 2011/06/08, in その他, by evermidori
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夕食のあと片付けが終わっていない、洗濯物もたたまなくちゃ、メールの返事、明日の仕事の用意、劇の小道具作り、しかも通信簿書きが迫っている。あ-あ・・・忙しさに付いて行けないのは歳のせいかなあ。

しかし、雨さえ降っている静かな夜更けではないか。これ以上の時は無い。今だ!これから至福の時間を過ごそうという明確な意図を持って暖炉の前の肘掛け椅子に座る。燃える火の暖かさと赤ワインの美味しさと既に好きになった著者と怠け者の私だけの小宇宙に、すっぽり心地良く逃げ込む。「忙しい時に」「全てを放ったらかして」「時間を惜しまずに」「親密に」本を読むのは最高。

やるべきことを先にキチンと片付ける妹に比べ、姉の私はこの点でもかなり劣るけど、これはもう死ぬまで仕方の無いこと。

 

パセリ

On 2011/06/08, in , by evermidori
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赤レンタルとカボチャのスープが美味しく出来たというだけの言い訳けで、2週間と2日しか経たない柔らかいパセリを摘んでしまった。精一杯の色と香りで健気にスープを引き立ててくれたけれど、幼いパセリに対して罪悪感を感じている。ご免ね。成長した野菜達に「採って、採って!私を食べて!」と言われる時まで、待たなくちゃね。