何年も会わなかったジョン・ジョーンズが、今年の2月に亡くなった。「お葬式は要らない。木を植えて欲しい。」と言っていたと聞いて、このクラブ・アップルの木を庭の隅に植えた。
花が咲いて、ジョンを偲んでいる。元気だった頃の声や仕草を思い出す。ワインの好きな、シャイで静かな地質学者だった。地球の歴史や星のことを話してくれた。面白い英語の表現も教えてくれた。優しい人だった。大きな体を揺すって悪戯っ子みたいに笑った。スペンサー湾に、別荘がいくつかあるだけの無人島があって、10人乗りぐらいの小さい飛行機で二度遊びに行った。釣った魚でお寿司を作ったら喜んでくれた。ジョンの家にはプールがあった。裸で泳いでいると、ジョンが私をじっと見ている。40代の私にとって60才を過ぎたジョンはお爺さんだったから、恥かしくもなんともなかったけれど、今思い出すとちょっと恥かしい。
大学を辞めて、奥さんと別れて、気持も体も弱くなって、ジョンらしくなくなって、それで私はだんだんと会わなくなった。寂しかった(だろう)ジョンに、もっと会いに行けば良かった、と悔やんでいる。もう遅い。もう決して会えない。