Live and Become (約束の旅路)

On 2010/07/31, in 映画, by evermidori
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“The Concert” はロシアのユダヤ人のことだったけど、この “Live and Become” はエチオピアからイスラエルに移り住んだユダヤ人のことだ。
イスラエルは、エチオピアで飢餓や迫害に苦しむユダヤ人をイスラエルに受け入れて市民権を与えた(そうだ)。その一環である1984年「モーゼ作戦」の時に、ひとりの母親が自分の子供をユダヤ人に紛れて脱出させるところから映画は始まる。子供が安全な地で生き延びるようにと。生きて何者かになるようにと。そのわずか9才の男の子が、エルサレムの町で差別に傷付きアイデンティティーに悩みながらも成長していく過程が描かれる。黒人だからと冷たくされ、イスラエル生まれのユダヤ人じゃ無いからと差別を受ける。しかも(実は)ユダヤ人ではない。優しい養父母と暮らしていてもいつも母親が恋しい。大人になって結婚して国境なき医師団の医者としてスーダンに行った時に、ついに母親との再会を果す。息子を抱く老いた母親の吠えるような号泣が赤茶けた大地と空にこだまする。
映画は良かった。しかし観終わった時の胸の重たさよ。差別や戦争が終わる日は来るのだろうか。


 

チョコレート

On 2010/07/31, in 食べ物, by evermidori
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Bracegirdle’s という店が作っているベルギーのチョコレート。こんな素敵なチョコレートのひと箱を貰ったら嬉しくて飛び上がってしまうけど、自分で自分にプレゼントするしかない。

好きなのを選んで箱に詰めてもらう時の嬉しさ。箱を開けて綺麗な色と形を眺める楽しさ。宝石のようなひと粒を口に入れてゆっくり味わう幸せ。たいていコーヒーと一緒に。う〜ん、美味し〜い!ささやかな贅沢はいいなあ・・・。

たいぶ前に観た映画「ショコラ」をもう一度観たくなった。主演のジュリエット・ビノーシュが、小さな保守的なフランスの村に引っ越して来て、チョコレートの店を開く話。あの店を覗いてみたいなと思う。

 

The Concert

On 2010/07/29, in 映画, by evermidori
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アンドレイは、ボリショイ交響楽団の天才的な指揮者だった。30年前にブレジネフの反ユダヤ人政策に協力しなかったことで首になり、今はそこで掃除人として働いている。ある日パリからボリショイ交響楽団へ招請状が来ていることを知り、チェロ演奏者のサーシャを始め昔の演奏仲間を急遽かき集め、本物のボリショイ交響楽団になりすましてパリへ乗り込む。パリではバイオリンのソリストに美しいアンヌを得て、チャイコフスキーを演奏することに成功する、というのが大まかなあらすじ。
上映最後の日に、トラックシネマの50人程しか入れない小さない映画館で観た。

長いドタバタ喜劇の部分はまったく面白くも可笑しくも無いし、お話にならない無理なことがあり過ぎる。演奏者全員のパスポートをジプシーが空港で偽造したり、マフィアが出て来たり、30年も演奏していない人たちが練習もリハーサルも無しでぶっつけ本番だったり。それに、フランスに到着した演奏家達のめちゃくちゃな行動は偏見と誇張で描かれていて、可笑しいどころか不愉快だ。(外国映画の中で日本人がよく変な風に描かれていることを思い出す。)

ところが、映画の雰囲気はがらっと変わって、最後に明らかにされる物語の真実には心を打たれる。アンドレイが何故そうまでしてパリに行ったのか、何故チャイコフスキーのバイオリン協奏曲なのか、どういう過去が伏せられていたのか、パリで活躍する アンヌの母親は誰だったのか・・・・・そしてコンサートのシーンは、それまでのドタバタの何もかもを忘れさせるほどに実に素晴しい。指揮をするアンドレイとバイオリンを弾くアンヌとオーケストラの奏者たちの心が共鳴し合って、奇跡のような究極のハーモニーが生まれる。アンヌの奏でるバイオリンが美しく哀しく響き渡り、コンサートホールの聴衆と映画の観客を感動と涙の渦に巻き込んで幕が下りる。思わず立ち上がって拍手したくなる。

最後の15分ぐらいだけのためでも観る価値があるかもしれない。しかし感動のシーンはそのままで、もうちょっと違った映画にならなかったのかなあ、というのが、ドタバタを楽しめない私の率直な感想。ロシアには反ユダヤ政策やユダヤ人迫害の長い長い歴史があること、ブレジネフ書記長の時代には多くのユダヤ人が国を捨てて出て行ったことなどを知る機会を得た。ドタバタに懲りずに、同じ監督(Radu Mihaileanuの ”Live and Become” と “Train of Life” もそのうち観てみようかなと思っている。どれも民族問題や差別がテーマになっている。



 

徒然草

On 2010/07/28, in , by evermidori
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キッカケは「朴の木」だった。Kさんから次のようなメールを頂いた。

実生の朴の木は去年春に植え替えてやったばかりで、まだ木はひょろひょろとし
て、香りの良い花どころではありません。葉っぱばかりでかくなって。
しかも、あれは巨木になるので、今年の秋ぐらいには木の芯をつめて背が高
くならないようにしないと、近所中の話の種になって徒然草にも書かれてしま
うでしょう。

ふうん、背が高くなり過ぎた朴の木のことが徒然草に書かれているのかしら。読んでみたいな。

しかし、インターネットで調べてみてももそういう文章は見つからず、朴葉味噌とか朴葉餅とか目的とは違うことばかり出てくる。諦めて、「・・・徒然草にも書かれてしまうでしょう、というのが分からないので教えて下さい」というメールを送ったところ、さっそく45段を送って下さった。

公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞えしは、極めて腹あしき人なりけり。
坊の傍に、大きなる榎の木のありければ、人、「榎木僧正」とぞ言ひける。
この名然るべからずとて、かの木を伐られにけり。その根のありければ、
「きりくひの僧正」と言ひけり。いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てた
りければ、その跡大きなる堀にてありければ、「堀池僧正」とぞ言ひける。

ああ、「朴の木」じゃなくて「榎木」だったのね。どうりで探せなかったわけだ。これでKさんのメールがやっと分かった。そう、そう、榎木の僧正、切り杭の僧正、堀池の僧正・・・・中学か高校の教科書で習った記憶が今頃になって蘇るが、あまりにも深く埋もれている記憶は必要な時の役には立たない。

絞りたてのオリーブ油が届いたというお礼とともに、117段も引用して下さった。

まことに「よき友三つあり。一つには、物くるる友。二つには、医師(くす
し)。三つには、智恵ある友」ですね。徒然草第117段ですが、「友とするに
わろき者、七つあり。・・」の後に書かれたくだりです。

Kさんは、いろいろなことを教えて下さる「知恵ある良き友」だ。
こういうことがあって、今「徒然草」を読んでいる。島内裕子さんの現代語訳に助けられ、インターネットで他の人の説明を読んだりもして楽しんでいる。なかなか面白い。


 

ひなたぼっこ

On 2010/07/25, in , by evermidori
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冷たい雨がよく降って毎日寒い。湿度が高いから尚更寒く感じる。
「雨が好き、冬が好き」というのは本当だけど、久し振りにパアーっと晴れるとやっぱり嬉しくて、気持も明るくなるようだ。家の中に居るのは勿体無い。お茶と文庫本を持って行って、庭の隅っこにあるベンチで「ひなたぼっこ」を楽しむ。太陽に背を向けると本のページが陰になって読み易い。やわらかな陽射しにすっぽり包まれて、鳥の声しか聞こえない時間を過したというそれだけのことが、ブログに書くほど嬉しいのが可笑しい。「ひなたぼっこ」なんていう素敵な言葉は英語には無い。

春はまだ遠い。遠いほうがいい。


 

ユーリ・ノルシュテイン

On 2010/07/24, in 映画, by evermidori
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「魔女の宅急便」も「耳をすませば」も良いけど、ユーリ・ノルシュテインのアニメーションは素晴しい。

人形アニメーションの川本喜八郎について調べていた時に、ユーリ・ノルシュテインというロシアのアニメーション作家に突然出会った。日々新しく見るもの聞くものはいろいろあっても、めったなことに「出会い」はしない。出会うというのは心の中まで入って来ること。

期待を持って「作品集」をアマゾンから取り寄せたところ、実に期待以上だった。
10月革命の「25日・最初の日」を観始めてまもなく釘付けになってしまった。こんなアニメーションがあったのか!白と黒の絵の中に赤が生き生きと動く。動きのどの一瞬を切り取っても一枚の素晴らしい絵だ。いや、実はその反対なんだ。アニメーションというのはおびただしい数の絵が動いているのだもの。音楽が良いし、説明が数少ないのが良い。「ケルジェネツの闘い」も絵が素敵だ。色が綺麗でたまらない。動いているときも静止している時も紙人形のたちの表情の豊かなこと。やはり音楽の役割が大きい。

「狐と兎」「あおさぎと鶴」「霧につつまれたハリネズミ」「愛しの青いワニ」は、ほのぼのとした、切なく悲しく心温まる童話だ。たぶん大人の童話だ。とっても綺麗だし、じーんと感動する・・・。DVDのパケットに書いてある「映像詩人」という言葉がぴったりだと思う。ユーリ・ノルシュテインという人の人柄が会わなくても分かるような気がする。このDVDは、長く大切にしたい。


 

明るい色

On 2010/07/22, in その他, by evermidori
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洋服は勿論、カーテンからタオルから食器や小物に至るまで、私の暮らしは地味だ。黒、白、グレー、ベージュ、茶色、せいぜい緑かブルーで、それも無地か縞かチエックか、無難なものばかり。明るい赤やオレンジや黄色とはあまり縁が無い。何故だろう。
父親の影響に間違いない。父は、母の着物も子供達の服も食器なども、全て自分の好みで選んでいた。ほとんどが地味でシンプルなものばかりだった。小学校の同級生達はフリルの付いたピンクの可愛いらしい服を着ていても、私はグレーのワンピースだったり、紺のブラウスだったり黒のセーターだったりした。それでも不満を感じたり文句を言ったりはしなかった。与えられるものを着て与えられるものを食べていた。そういう時代だったと思う。

大人になって何でも自分で買うようになっても、気が付くと私は父が選んだようなものを選んでいる。父の好みがいつの間にか自分の好みになってしまっていたのだ。子供の時の環境や教育は大きいんだねえ。

ところが、「全てに時がある」のか、今頃になって突然、何と赤い鍋と赤い花柄の布巾を買ってしまったのだ!!自分でも驚いている。そして、眺めては使っては「何と綺麗!やった!」と、心から楽しい。限られた人生、もう少し冒険してピンクも黄色もオレンジも試してみよう。

 

フィジョアの苗

On 2010/07/22, in , by evermidori
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少し前に、果物のフィジョアが好きだと書いた。高い香りが好きだと書いた。
先日、友達のAさんが興奮して私の家にやってきて、「緑、見つけたのよ、フィジョアの苗を!」と言って鉢植えの苗をプレゼントしてくれた。
実は、私は植物を育てるのが上手じゃない。いろいろ欲しいものを買ってきて植えては次から次に枯らしている。水をやるのが足りなかったり多過ぎたり忘れたり、植える場所が悪かったり土を酸性やアルカリ性に保つことを怠ったり。
それで、フィジョアの苗はとても嬉しいプレゼントだけど、育てる自信はあまり無い。3メートルの高さと広がりになると書いてある。陽の良く当たる水はけの良いところに植えるようにと書いてある。水分を保つ為に回りにマルチを敷くと良いと書いてある。柑橘類に与える肥料が適していると書いてある。出来るかなあ・・・出来ないだろうなあ。

でも、最初から諦めないで、Aさんの親切に応えるためにも育ててみよう!庭に3メートルのフィジョアの木があるなんて素敵だ!毎年4月頃に沢山の実がなったら食べ放題。勿論Aさんにも分けてあげよう。

 

ルバーブ

On 2010/07/04, in 食べ物, by evermidori
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ルバーブ(Rhubarb) は蕗のように見えるけど、味は甘酸っぱくて煮ると軟らかくくずれてしまう。
ルバーブとオレンジを適当な大きさに切って砂糖を入れて(水無しで)煮る。アイスクリームを添えて、冬の温かいデザート。

オレンジの代わりに林檎と一緒に煮ても美味しい。ナツメッグ、生姜、シナモン、オレンジリキュールなど、入れたい時は好きなように入れる。

パイにすると美味しいと聞いたけど、まだ食べたことも作ったことも無い。

この綺麗な赤い色に惹かれて時々買ってしまう。

 

“Carla’s Song”

On 2010/07/02, in 映画, by evermidori
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7月2日(金)

グラスゴーでダブルデッカーのバスの運転手をしているジョージは、ニカラグアから来たカーラに出会って恋に落ちる。カーラは内戦の残酷な体験が原因でトラウマを抱えている。やがて、彼女の心の解決のためには(カーラの恋人だった)アントニオの行方を探すべきだとジョージは考え、カーラと一緒に、まだ混乱の中にあるニカラグアへ行く・・・・・。
前半の舞台であるグラスゴーの街の様子や、後半の舞台になるニカラグアの風景や人々を興味深く眺めた。まるで知らなかったニカラグアのことも映画をキッカケに少し知ることが出来た。
アントニオとカーラの再会を見届け、ひとりでスコットランドに帰って行くジョージの顔は爽やかに見えるけど、私はとても寂しかった。

DVDには、監督のケン・ローチと脚本家のポール・ラヴァティーの解説とカットされたシーンも入っていて、わずか3ポンドでは安過ぎて申し訳無いみたい。カーラ役のオヤンカは、ニカラグアのダンサーで、この映画の為に4ヶ月間英語の特訓を受けたそうだ。ジョージ役のロバート・カーリルは、まずバスの運転免許を取ったそうだ。出て来るお医者さんは本当のお医者さんで、ロケに使われたアパートは・・・etc. etc. というようなことを知って面白かった。

ケン・ローチの映画を観るのはこれが3本目。
最初は「大地と自由」を岩波ホールで観て、衝撃を受けた。スペイン戦争と、同胞同士のその後の分裂という辛く重たいテーマを、どうしてこんな綺麗な映画にすることが出来るのかと思った。出演している人たちが皆素敵で、忘れられない映画になった。

次に観たのは、アイルランド独立戦争と内乱を描いた「麦の穂を揺らす風」で、Hさんにお願いしてコピーを送って貰った。これも素晴らしい映画で、闘いの残酷さと息苦しさを嫌と言うほど見ながら、それを超える感動と爽やかさが残った。「カルラの歌」は、ケン・ローチの映画だとういうだけで観たいと思っていた。この冬休みに観るためにアマゾンUKから買った。期待通りやっぱり良かった!3本とも五つ星だ。

Carla